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冬季オリンピックが我々にもたらしたもの
        
2022-02-18 17:54 | CE.cn

「冬季オリンピックの夢」が「中国の夢」と交わって一つとなった昨今、「三億人のウィンタースポーツ参加」というビジョンが現実のものとなっている。では、北京2022冬季オリンピックは、中国のウィンタースポーツ産業に対して、どのような推進力をもたらしているのだろうか?また、消費面においては、どのような新たな原動力となっているのだろうか?   更には、「京津冀(北京・天津・河北)」地域の協調的な発展をどのように推し進めることになるのだろうか?そこで、今回、記者はこうした話題性の高い問題をめぐり、中国観光研究院の戴斌院長、中国国際経済交流センター経済研究部の劉向東副部長、PwCグループの梁偉堅中国市場マネージングパートナーにそれぞれ取材を実施した。

 

北京漁陽国際スキー場においてスキーを楽しむ子どもたち。撮影・任超(新華社)

産業発展の新たなきっかけを掴む

記者:産業発展という視点から見て、北京冬季オリンピックが中国のウィンタースポーツ産業にもたらす推進効果をどのように認識すべきでしょうか?

劉向東氏:冬季オリンピックの開催地、ひいては、全国のウィンタースポーツ産業の発展に対して、今回のオリンピックの開催は、重要な役割を果たすことになるでしょう。北京冬季オリンピックの開催をきっかけとして、「三億人によるウィンタースポーツ参加運動」を促進することは、氷雪観光業、文化・スポーツ事業、ビジネス・飲食業、宿泊・不動産業等の関連産業の発展を導くだけでなく、ウィンタースポーツ、万里の長城、民俗文化、地方の特色が活かされた産業によるビジネスチャンスを開拓することになるでしょう。また、ウィンタースポーツを始めとする冬季オリンピック競技用の装備に関わる産業技術の転換能力と研究開発技術を強化することにより、「三億人によるウィンタースポーツ参加運動」の背後にある巨大市場の需要を効率的に満たすことができます。北京冬季オリンピックは、中国のウィンタースポーツと世界のウィンタースポーツ産業に貴重なレガシーを残し、中国のウィンタースポーツ産業の急速な発展を後押ししてくれることでしょう。近年、コロナ禍の中でも、ウィンタースポーツ産業は、成長の勢いを取り戻し、今後5年間における産業規模は、1兆元超となることが想定されており、大きな発展の可能性が期待できます。

 

梁偉堅氏: 北京冬季オリンピックの招致・開催という出来事は、中国におけるウィンタースポーツの普及・発展を先導する役割を果たしました。これは、「三億人によるウィンタースポーツ参加運動」という目標を実現し、中国の一般大衆の健康レベルを高め、「健康中国」の建設を推進することでもあります。そして、北京冬季オリンピックの開催により、中国におけるウィンタースポーツ産業は、発展の黄金期に入ることが期待されています。氷雪関連施設に対する需要が増加するため、それに伴い、ウィンタースポーツ用装備における科学技術力のイノベーションも生まれていくことでしょう。同時に、ウィンタースポーツ用装備に関する産業パークも数多く誕生しました。このような状況下において、氷雪産業も他の産業と深く融合し、スポーツトレーニング、研修・教育、スポーツ観光といった形をとることにより、フィットネスレジャー産業の発展を牽引しています。氷雪産業の発展は、前途有望であり、氷雪装備・衣服等のハイテク商品が氷雪消費のグレードアップの形として注目を集めており、その場合は、産業チェーンとサプライチェーンの協同が極めて重要になるでしょう。

 

記者: 今後、中国は、氷雪産業において、質の高い持続可能な発展をどのように推進していけばよいでしょうか?

戴斌氏: 氷雪観光の発展は、オリンピックのレガシーの創造的な転換、革新的な発展を実現するための有効な道筋となるでしょう。北京冬季オリンピック・パラリンピックが残してくれたものは、スポーツに関する文化遺産だけでなく、氷雪経済における資産ともなるのです。冬季オリンピック・パラリンピックの開催都市の多くは、大会以前からスキーリゾートとして知られていました。オリンピックによる効果が発揮されるにつれ、大会後には、世界中からの観光客が次々と押し寄せ、現地の経済・社会の発展を牽引することが期待されています。

北京と張家口においては、2022年冬季オリンピック・パラリンピックの開催都市として、高機能の競技場と交通インフラが数多く建設・整備されてきました。開催期間中に果たす役割に加えて、閉幕後は、極めて貴重なオリンピックのレガシーとなることが期待されています。これらの競技会場、サービス施設、交通インフラは、ウィンタースポーツ、氷雪観光の発展における、貴重な資産となることでしょう。中国の氷雪経済は、まだスタート段階にあります。オリンピックのレガシーを資産へと変えるためには、科学的かつ合理的な計画設計と市場開拓が不可欠です。

劉向東氏:世界の「氷雪強国」に比べて、中国は氷雪に関するインフラ、人材育成等の面において、不足しているところが依然として数多くあります。今後は、ウィンタースポーツの会場等の設備建設を強化し、市民のウィンタースポーツに対する認知度、参加度、普及率を高めることが重要です。それと共に、氷雪人材育成の仕組み作りを基礎として、ウィンタースポーツの裾野の拡大、地域的な均衡と協調的な発展の実現の促進、氷雪設備の技術の蓄積・革新の実現が望まれます。更には、次世代の情報技術やスマート端末製品の応用を促進することにも重点を置く必要があるでしょう。

 

氷雪消費の新たな原動力を引き出す

 

記者:消費の視点から見た場合、北京冬季オリンピックは、ウィンタースポーツにおける消費をどのように促進することになるでしょうか。

 

劉向東氏:北京冬季オリンピックの開催を通して、市民のウィンタースポーツへの関心とスマートデバイスへの消費意欲が高まりました。第一に、最新技術・製品の消費の促進が期待できます。 北京冬季オリンピックは、「科学技術オリンピック」のコンセプトが採用されており、5G技術に基づくバーチャルリアリティ(VR)、シンクロビュー、パノラマビュー等を通して、新たな形での大会競技の視聴体験が実現しました。そして、5Gネットワークに基づくスマートドライブ、ドローン配送、スマートセキュリティ等を含む新たなアプリケーションは、中国の最新技術・研究成果を世界にアピールすると共に、スマートデバイス、デジタル製品に関する消費の促進という役割も担っているのです。第二に、エコ製品の消費の促進が期待できます。北京冬季オリンピックは、「エコオリンピック」のコンセプトが採用されており、水素で走る燃料電池バスの使用や「オリンピック低炭素ゾーン」の創設等、より多くの新エネルギー製品を採用することにより、環境にやさしいエコ製品の消費を効果的に促進することにもなるのです。第三に、文化創意商品の消費の促進が期待できます。北京冬季オリンピックは、「シェアオリンピック」のコンセプトが採用されており、現代建築と自然景観、歴史・文化の融合が目指されています。代々、継承していくべき、幸福をもたらす優れた資産とすることにより、文化製品の消費を効果的に促進することにもなるのです。第四に、国際的なスポーツ観光消費の発展の促進が期待されます。冬季オリンピックは、開催地である北京と張家口における観光の発展を考える上で、国際的な視野をもたらすことになるでしょう。これは、地元の文化・観光の特色を世界にアピールする絶好の機会でもあるのです。新型コロナウイルス感染症の収束後には、視察旅行、レジャー観光、商談、工場への投資、療養・定住を目的に、オリンピック開催地を訪れる外国人観光客が更に増加するはずです。北京は、オリンピックの開催都市として、その魅力、実力、活力を世界に発信し、国際的な文化・観光消費の可能性を引き出すことが期待されます。

 

記者:ウィンタースポーツに関する消費を新たな原動力として、持続的に活発化させるにはどうすればよいでしょうか。

 

戴斌氏:現在、中国は市場の地方化と消費のアップグレード期を迎えており、全面的な発展を遂げている「大衆観光」は、新たな段階に位置しています。北京冬季オリンピックにより生み出された、ウィンタースポーツ関連の娯楽・観光産業の膨大な消費市場は、観光経済の拡張と発展にプラスの影響をもたらしてくれます。従って、我々はこのチャンスをしっかりと掴み、「大衆観光」のニーズに適応できるよう、ウィンタースポーツのインフラ建設に取り組むことが肝要です。そのためには、より多くの新プロジェクト・新製品・新業態を作り出す必要があるでしょう。需要と供給の両面から着手することにより、政策を着実に実行に移すことができます。我々は、空間の効率的な配置の最適化、プロジェクトのサポート強化、優れた氷雪観光商品の研究・開発、北京・張家口のスポーツ文化観光により生まれた革新的な供給システムの完備を実現させなければなりません。異なるレベルの行政区画にまたがる観光ブランドを共に発展させていくことは、世界的な難題だと言えます。この問題を解決するためには、科学的なトップダウン設計のほか、地方における具体的実践とイノベーションの実現も必要になります。また、知名度の高いウィンタースポーツの招致・開催、海外向けインバウンド観光のPR活動の増加、京張(北京、張家口)地区のスポーツ文化観光がもたらしてきた国際的な発展空間の開拓も重要でしょう。そして、観光地の建設とブランドの育成という視点から、文化の牽引機能と科学技術のイノベーションの強化、スマート観光の発展、観光ガバナンスと観光客の満足度の絶え間ない向上を目指していきたいと考えています。

 

記者:地域経済発展の視点から見ると、北京冬季オリンピックは、北京・河北両地区の地域経済の協同的な発展に対して、どのような積極的な影響をもたらすことになるでしょうか?

 

劉向東氏:「京津冀(北京、天津、河北)」地域の協同的な発展の持続的な推進に伴い、崇礼、延慶、懐来といった各地域における付帯施設の整備が加速しています。冬季オリンピック開催を目的とする一連の重点プロジェクトは、北京・張家口両地域のインフラの相互接続を推進しました。京張(北京~張家口)高速鉄道の開通は、北京市内から延慶区、河北省張家口市といった周辺地域への所要時間を大幅に短縮することになりました。このことは、エリア内の大・中・小都市の協同的な発展を牽引し、「京津冀」という世界的な都市群の建設を推進し、「京津冀」の地域一体化による発展に新たな局面の形成を加速させました。特に、地方経済と産業発展を統一的に計画し、冬季オリンピックに関する文化·スポーツ観光産業チェーンを北京と張家口が共同で建設することにより、地方経済の発展と産業構造の調整が推進され、都市と農村の住民が共に利益を享受できるようになるのです。

 

梁偉堅氏:北京は世界初の「ダブル・オリンピック・シティー」となりました。人々は、冬季オリンピックのレガシーに必ずや賛辞を送ることになるでしょう。北京冬季オリンピックは、招致活動の段階からオリンピック開催後のレガシーについて十分な考慮がなされてきました。そのために、北京冬季オリンピックのレガシー戦略計画が策定され、スポーツ・経済・社会・文化・環境・都市発展・地域発展の7つのテーマと35の専門領域から冬季オリンピックのレガシーに関する計画・運用が行われることになっています。このことは、開催都市および周辺地域の長期的な発展に貴重な財産を残し、より多くの人々に恩恵を及ぼし、ひいては、オリンピックが都市・周辺地域の発展との「ウィンウィン」を実現することへと繋がるでしょう。冬季オリンピック閉幕後、張家口会場と延慶会場は、北京北西部スキー観光産業チェーンとしての再整備が予定されており、このエリアを中心として、華北地区全体のスキー観光産業の発展が期待されています。

 

(中国経済網 記者・馬常艶)

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