ニュース
【観察眼・2020総括編】⑤脱貧困での中国の経験が、世界の貧困削減の力になる
        
2020-12-30 16:54 | CRI

  激動の2020年が終わりを迎えようとしています。世界は様々な未曾有の事態に直面しましたが、危機の中でも相互に理解することが大切なのだと、改めて噛み締める一年でもありました。

  日本語部オリジナルの評論コーナー「観察眼」ではこの一年、中国国内の話題を紹介し、中日間の問題や国際問題への見解を示すことで、読者の皆様に中国への理解を深めてもらおうと努めて参りました。

  2020年の締めくくりとして、今年のキーワード「新型コロナ」、「中日関係」、「環境保護」、「電子ビジネス」、「対外開放」、「貧困脱却」をテーマに、評論員たちがこの一年を総括します。

  

  第五回テーマ「貧困脱却」

  脱貧困での中国の経験が、世界の貧困削減の力になる

  8年間のピンポイント貧困扶助と5年間にわたる貧困脱却への堅塁攻略戦を経て、中国全土に832カ所あった貧困県はすべて貧困を抜け出した。その過程では、960万人以上が住みやすい場所へと移住し、全国の1億人近くが脱貧困に成功した。最大の発展途上国である中国の脱貧困は、世界全体の貧困削減にとっての重要な一環である。改革開放が始まってからの40年間に目を向ければ、中国の貧困人口は8億人以上減少し、世界の貧困削減への貢献率は70%以上となっている。中国の脱貧困の経験は、貧困問題の解決に向けたグローバル・ガバナンスに無限の可能性を与えている。

  中国の脱貧困プロセスにおいて最も複雑な長期プロジェクトとなったのが、「貧困人口の移住政策」だ。この開発式の貧困扶助によって人生が大きく変わった貧困住民の数は960万人以上、この数は三峡ダム建設時の移民の7倍に当たる。貧困人口の移住とは、辺鄙な山間部から住みやすいコミュニティ(社区)への単なる地理的な遷移ではない。閉鎖的な状態から、開かれた生産方式、ライフスタイル、考え方へと移行することでもある。居住環境の整備はもちろん、インフラ施設とサービス施設の建設、後続産業の開発、雇用の創出、さらには文化の伝承までを含む再建プロジェクトとなっているのだ。

  第13次五カ年計画(2016-2020年)の期間中、中国は貧困人口の移住政策に計6000億元を投入し、移民を受け入れるための居住エリア3万5000カ所、住宅266万軒を建設し、建築面積は延べ2億1000万平米に達した。1世帯当たりの居住面積は80.6平米が確保されている。さらに、小中学校や幼稚園などが計6100カ所新築(または改築)され、病院とコミュニティ内のクリニック1万2000カ所、老人介護施設3400カ所、文化娯楽施設4万カ所が建設された。

  貧困人口の移住は生態環境の修復にもつながった。局地的に過剰となっていた人口が移されたことで環境が回復し、「緑水青山(澄んだ川と青い山)」の姿を取り戻した場所も多い。 また、第13次五カ年計画の期間中、国家林草局と財政部、国務院貧困扶助弁公室は中西部22の省・自治区・直轄市において、貧困住民として登録されていた110万2000名を森林作業員として雇い、300万人以上の脱貧困と増収につなげた。この取り組みによって新たに増えた森林と草原の面積は6000万ヘクタールに達し、環境保護と脱貧困の相乗効果が発揮された好例となった。

  産業開発による貧困扶助は、「輸血」を受ける状態から、自ら「造血」する能力を獲得するに至るための重要措置だ。持続可能な発展への重要な一歩とも言える。新型の農業経営主体を育成することで、耕作モデルは効率的かつ集約的な現代化農業へと発展し、農業現代化と地方産業構造の調整とモデルチェンジが促された。「企業+合作社+基地+貧困住民」の産業開発モデルによる観光業、森林産業、竹・ラタンの加工、花卉栽培など特色ある産業が雨後の筍のように成長してきた。ツバキ油を例にすると、中国では油の原料となるツバキの栽培面積は453万ヘクタールで、ツバキ油の生産高は62.7万トン、生産価値は1160億元となっており、200万人近くの脱貧困と増収を促した。

  財政部門が打ち出す優遇策も、貧困地区の地場産業を力強く後押ししている。第13次五カ年計画の期間中、中央財政は貧困扶助に用いる専門資金を年間200億元追加し、2020年の貧困扶助専門資金は1461億元に上った。また、2020年1-10月に貧困脱却への堅塁攻略戦によって減免された税金額は960億元を上回った。

  貧困扶助を「知」の分野から支えているのは、科学技術のイノベーションだ。近年、中国では都市部と農村部のデジタル格差が縮まり続けており、Eコマースによる貧困扶助、観光による貧困扶助、レジャー生態産業による貧困扶助が大きな進展を遂げ、大量の雇用を創出している。「中国インターネット発展報告2020」によると、ここ1年、中国のデジタル農村建設とインターネットによる貧困扶助は急進展を見せ、2020年6月までに、都市部のインターネット普及率は76.4%に上り、農村部でも52.3%に達した。田舎の農産物が流行のヘルスケア商品となり、農民たちはライブコマースを配信するパーソナリティーに変身して、ネット通販ショップの経営に挑戦している。中には、羊の畜産や養蜂にAI技術を活用する農家も現れている。新技術は資源の再編、チャンスの均衡化、成果の共有を促しながら、農村部に新たな発展モデルをもたらし、若者による農村部での就職・起業ブームを引き起こすなど、既存の価値観すらも変えつつある。

  衣食住に悩むことなく、安心して働き、落ち着きある豊かな生活を送りたい――これが中華民族の最もシンプルな願いだ。その願いへと向けて、貧困者たちを新生活のスタート地点に立たせた中国の成功例は、「美しい政治的ビジョン」、「科学的な貧困扶助戦略」、「適切な支援政策」の3つが揃えば、脱貧困は完全に実現可能な目標であると証明した。(CRI日本語部論説員)

0