中国
漢字忘れが深刻化 忘れるのは字だけではない
        
2019-04-10 17:38 | チャイナネット

 

  情報化時代、「字の形はイメージできるが、書こうとすると書けない」というネットユーザーは多い。某機関の調査によると、「ペンを持った時に字が思い出せない」という経験をした人は94.1%に達し、うち26.8%がそのようなことが「しょっちゅうある」と回答し、特に若者の間でその傾向が目立つ。「字が思い出せない」という問題の深刻化をどのようにとらえるべきか。このような現象を招いた原因は何か。

 

  第5期、6期中国書道家協会副主席・清華大学教授の言恭達氏は以下のように答えた。インターネット時代、文字の記録方法が革命的に変化し、キーボードで素早く文字を打ち、一画ずつ漢字を書くことがなくなった。多くの人が漢字の大体の形は覚えているが、ペンを持つと部首構造を正確に書けなくなっている。字を思い出せないことはデジタル化時代において回避できないが懸念される現象である。人類の科学技術革命が進むにつれ、このような現象は普遍化している。字を思い出せないという現象が起こった原因の1つは、紙とペンの代わりにパソコンが多く使用されるようになったことである。漢字のピンインが数十年にわたり全面普及し、素早く入力できるピンイン入力法により、人々は漢字の構造に目を向けなくなった。このようなパソコンによる「漢字健忘症」は伝統の筆記習慣を覆している。もう1つは、伝播と交流のツールが多様化し、漢字を書くという習慣が変わったこと。例を挙げると、現在は携帯電話で情報をやり取りすることがほとんどで、手紙を書くことは非常に少ない。大脳に記憶せず、ピンインで漢字を入力するようになり、書くことをしなくなったため若者の「漢字健忘症」に繋がった。

 

  中国社会科学院辞書編集研究センターの譚景春副主任は以下のように話す。字を思い出せないという現象は以前からあったが、ここ数年でより普遍化し目立つようになった。その原因は、漢字自身の特徴にある。漢字は符号のまとまりで、字の形、読み、意味に関係性があるが、規律性は低く、漢字を認識し書くには繰り返し記憶する必要がある。画数が非常に多い漢字もあり、「懿」という字は20画以上ある。「使えば伸びるが、使わなければ衰える」と言うように、字を忘れるという現象に対して不安に感じる必要はないが、そのまま放っておいてもいけない。

 

 

 現在はほとんどの人がパソコンや携帯電話で字を書く。あるネットユーザーは、「情報化時代に、私たちは漢字を手書きする必要はあるのか。ペンを持って字を書く意味は何だろう」と書き込んだ。

 

 

 言恭達氏は、「私たちは積極的、慎重、理性的な態度でデジタル化をとらえる必要がある。私たちが行う授業のほとんどがペーパーレス化し、効率などは向上したが、学生の漢字筆記能力の強化に力を入れるべきだとも気づかされた」と述べた。

 

 

 譚景春氏は、「字を見ればその人物がわかる」「字はその人物を表す」とよく言われ、字は書いた人の筆記レベルと人格の魅力を表すと考える。「漢字を認識し書くことは人の文化教育の始まりであり、生涯学習の基礎となり、日常生活と密接に関わる」と譚景春氏。

 

 

 武漢大学中国語情・社会発展研究センターの趙世挙主任は、「漢字は符号を記し書面で交流する重要なツールであるだけでなく、中華民族の知恵の結晶、中華文化の伝承と発展の宝、重要なキャリアでもある。漢字それぞれに造字の原理から形成に至るまでの中華民族の知恵と精神が凝縮されており、非常に貴重な文化財である。また、漢字には高い審美的価値もある。漢字健忘症が蔓延すれば、漢字離れが進み、母語意識が薄れ、漢字文化が失われ、漢字の文化的機能と価値も低下し、文化の伝承と共感にも影響が及ぶことになる」と話した。

 

 

 

 

「中国網日本語版(チャイナネット)」2019年4月9日

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